私の隣で母が笑っている。
その横顔を見ながら、
歳をとったな、としみじみ思う。
振り返ると、いつも叱られていた。
口ごたえしても、何度でも何度でも
母は怒った。
でも、それは私にだけではなかった。
見ず知らずの子まで叱るのだ。
電車で靴のまま席に立って遊んでる子。
レストランで大声をだしてはしゃぐ子。
周りの人たちの目なんて
気にせずに叱っていた。 |
若かった私は、
そんな母が恥ずかしかった。
でも、母親となった今、やっとわかった。
そこには、何の見返りも期待しない
他人を思いやる気持ちがあることを。
「ワタシ、お母さんの娘でよかった。」
隣にいた母にポツリとつぶやくと、
母は、照れくさそうに、また笑った。
そう。何も返ってこなくていい。
何もしてくれなくていい。
ただ、人を思う気持ちさえあれば―――。 |